山吹に想いを寄せて
『七重八重(ななへ やへ) 花は咲けども 山吹の
実のひとつだに なきぞ悲しき』
※平安時代『後拾遺和歌集』より
兼明親王(かねあきらしんのう)作
室町時代後期に関東地方で活躍した武将、太田道灌(おおたどうかん)が、鷹狩に出て雨に遭い、蓑を借りようとある小屋に入ったところ、若い女に山吹を差し出された。道灌は怒って帰宅したが、後にこの和歌の意の中に、貸し出す簑一つ無い「実のない=簑ない」ことの意を教えられ無学を恥じたという話
山吹の花を見ると思い出します
「絶対にスタッフを怒ったらあかん」
「お客さんは神さんや」
「従業員は宝やで」
そう教えてくださった利用者様とは
約一年間
お付き合いさせていただき
お別れしました
訪問するスタッフ一人ひとりを
常に歓迎してくださり
個々に看護師としてあるべき姿勢や
間違いを正してくださいました
山吹の季節になると
その方を思い出します
「獣を逐う者は目に太山を見ず」
訪問看護師は目の前の利用者さんだけや
病気だけを見ていても務まりません
山吹が実を付けなくても
何重にも花びらを重ねて
一つの花として完成するように
私たちあいりすのスタッフは
一人ひとりの利用者様本人と
ご家族さまの背景に目を向ける
関わりを大切にしています
風に揺れる山吹の華々を見ると
その方が語りかけてくださっている
そんな気がします
管理者 本井 万寿美